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Park の研究紹介


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NaBH4を用いた燃料電池水素発生システムの開発
Park dea Heum

研究内容


1.緒言

 可搬型電源として,リチウムイオン電源が様々な分野で幅広く使われるようになってきている。しかしながら,エネルギー密度がほぼ限界に達していることと,安全面での懸念が指摘されていることもあり,長時間電力供給維持のための格段の性能向上は見込めない状況になっている。最近では自立型ロボットの実用化が期待されるなど,信頼性が高く,より長持ちする高付加価値電源の要求が高まってきた。 一方,燃料電池は燃料物質を外部から供給することによって電気化学的に発電することに大きな特徴を有し,出力はセルを積層したスタックに関係するものの,エネルギー即ち持続時間は燃料源の量に依存する。通常の一次電源や二次電源と比較した場合,小容量ではシステムとしての燃料電池のエネルギー密度が低く不利であるが,ある程度の 容量を超過するとエネルギー密度が高くなる可能性が期待できるようになってくる。 以上のことに着目して,相対的に水素の体積及び質量貯蔵密度が高いケミカルハイドライドを水素源とすることで,リチウムイオン電池の性能を凌駕する燃料電池利用電源の実用化検討を進めることとした。水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)はエネルギー密度が7314Wh/Lで,Li-ionバッテリー(300Wh/L)より高く,化学的な安定性や爆発することがない安全性など多くの長所をもっているため,本研究における水素貯蔵媒体として検討することとした。NaBH4を直接的に燃料電池を作動するタイプの開発も行われているが,kW級の出力を得ることなどを踏まえて水素発生方式による燃料電池システム開発を企てた。

2.水素化ホウ素ナトリウムの特徴

 水素化ホウ素化合物にはLiBH4,KBH4,Mg(BH4)2,Ca(BH4)2,Al(BH4)3,NaBH4等がある。その中でNaBH4は他の水素化ホウ素化合物と比べ,空気中で安定,速い反応速度,反応温度が低く発熱反応で加熱装置の不要などの特徴があり,可搬型燃料電池電源システムの水素貯蔵媒体として適切である。長所の詳細を表 1にまとめる。また, 燃料電池と組合せる場合,次のような利点が得られる。

 (1) 被毒物質であるCOなどを発生せずに水素を生成するため,水素の精製システム
   が必要ない。
 (2) 反応速度が速く,触媒との接触のみによって反応するため,定量の触媒と反応物
   の供給量で発生流量が決められ,供給制御が容易で正確である。
 (3) NaBH4を水溶液状態で供給する場合,再充填が速やかで簡単である。

表1 水素貯蔵,供給媒体としてのNaBH4の長所水素貯蔵,供給媒体としてのNaBH4の長所

3.水素発生システム構成

図1は水素発生システムの構成及びフローを 図2は水素発生実験装置の構成図を示している。システムは大きくわけて,反応物(NaBH4)が供給され水素を発生する反応器部分,発生した高温,多湿の水素(80~100℃,相対湿度90~100%)を燃料電池が発電に要する加湿量に合わせて調節する湿度制御器部分,生成物(NaBO2)の排出部分から構成される。

NaBH4を用いた水素発生システムのブロックダイアグラム

図1 NaBH4を用いた水素発生システムのブロックダイアグラム


水素発生実験装置の構成図
図2 水素発生実験装置の構成図


バッファーの写真および構成図
図3 バッファーの写真および構成図


4.燃料電池への水素供給制御方法

 負荷変動に伴う燃料電池の発電出力に過不足なく水素供給が追従するためには,応答の速い水素生成量制御が必要となる。しかしながら,NaBH4の水素発生反応では物質や熱の輸送現象などが係ることで時間遅れが有意に大きく,燃料電池の負荷変動に対して必要水素量を瞬時にバランスさせることは実質的に不可能である。このような問題を改善するために,本研究では負荷変動対策として圧力バッファーで調整する方式を適用した。 本方法では一定空間を設けて圧力をかけて水素を貯蔵し,時間遅れの間燃料電池が必要とする水素を供給する。供給制御はバッファーの中の圧力を測定して単純に,設定下限圧力以下では反応物供給ポンプを作動させて燃料電池の発電によって消耗されるバッファー中の水素を補充し,一定の設定上限圧力以上では停止して一定圧力を維持する。 図3にバッファーの写真および構成図を示す。

5.システムの負荷追従性

 図4は負荷が変動した場合での,反応温度と水素供給流量,バッファーの圧力の各変化を示している。一定負荷のときと同様に最適反応温度領域で反応が進行し,圧力変動も1.5〜2atmを維持する成果が得られた。 以上のことから,バッファーの圧力が急激に低下せずに一定以上を維持していることが確認された。想定した負荷変動に対して水素の供給の過不足が生じることなく,適切に負荷に追従していることで,満足できる反応プロセスの動作性能とシステムの負荷追従能力が検証できた。

負荷変動下の水素供給システムの圧力,流量,反応温度の変化
図4 負荷変動下の水素供給システムの圧力,流量,反応温度の変化

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